【マンガシナリオ】シークレット・ラブ。
第三話「デートの約束」
〇数日後の放課後、二人並んで帰る
琴夏と北星が付き合っていることはほとんど学校中の生徒に知れ渡っていた。ただし、偽物の恋人として知っている人物は今のところ由奈のみ。
琴夏「……や、やっぱりこれはやりすぎじゃ……」
学校からの帰り道。同じ学校の生徒に見られながら俯く琴夏。琴夏は顔を真っ赤に染め、握られた手を見つめている。
北星「別にいーだろ?このくらいしなきゃ、“偽物の恋人”ってすぐにバレるぞ?」
北星は琴夏の反応を楽しみながらわざとらしく答える。内心可愛いという思いでいっぱいな北星はポーカーフェイスを保っていた。
琴夏の見つめる先には恋人繋ぎされた手があった。あまりにも近い距離にドキドキと心臓が暴れる。
琴夏「そ、それはそうだけど……」
そこまで言いかけたところで、琴夏の声が遮られた。
楓和「高比良くん〜!やっと見つけた!」
琴夏「つ、月島さん」
後ろから声をかけたのは楓和だった。突然の登場に驚く琴夏。北星は大きなため息をつく。
楓和は嬉しそうに駆け寄ると琴夏の存在を消し去るかのように北星に抱きつく。突然の事で琴夏は北星から離れた。
北星「……おい。なんの真似だ」
突拍子のない行動に怒り心頭な北星。琴夏との時間を邪魔されてイライラしている。
楓和「えー?ナンノコト?っていうかさ、なんで私を置いていくの?小鳥遊さんと付き合ってるって噂も流れてるし……」
北星の質問にすっとぼける楓和。視線だけ琴夏に向け、明らかに拒絶している。
琴夏「(……うわー。完全にめんどくさい方向にいってるじゃん。どうすんの?)」
琴夏はそんな楓和を見てドン引き。目配せして北星に訴えかける。北星は楓和の腕を振りほどくと琴夏を抱き寄せた。
琴夏「(……えっ?えっ!?どういうこと!?)」
北星「悪いけど悪いけどお前に説明するギリないわ。琴夏と付き合ってるのは事実だし。じゃ、そういう事で」
琴夏「(ードキッ)」
北星の言葉に顔を真っ赤に染める琴夏。
楓和「は、はぁ!?ちょっ、待ってよ!」
北星から睨まれ、拒絶された楓和は真っ赤に顔を赤く染める。楓和に気にもとめず、北星は琴夏を引っ張り、帰り道を急いだ。
琴夏「……あんなこと言って大丈夫だった?」
北星「大丈夫だろ。ただ、もう少し恋人アピールしなきゃならないな。あの様子じゃ、また突っかかってくるぞ」
真顔で琴夏に話す北星。琴夏は心配そうに後ろを振り向く。すると北星は琴夏を強く引き寄せた。
琴夏「きゃっ!な、何するのよ!」
北星「つーわけで、今度デート行くぞ。仲良し恋人アピールするには写真を撮って見せびらかす必要がある」
琴夏「デ、デデデート!?」
北星「そうだ。なんか問題でも?」
あまりの近さに挙動不審になる琴夏。吐息のかかるくらいの近さに息が詰まる。
琴夏「も、問題しかないわよ!なんで私が北星とデートを……」
北星「じゃ、決まり。詳細は後ほどメッセージ送るわ」
琴夏の話を遮る北星。反論しようとしたが有無を言わさないスピードで話を終えた。
琴夏「(デ、デートなんて生まれてこの方したことないのに、北星となんて……!というか、人の話を最後まで聞けー!)」
心の中で言いたいことを言うが、面と向かって言えない。心の中で叫びながら、北星の一歩後ろを歩いて帰った。
〇次の週末、琴夏の部屋
琴夏の部屋には散らかった服やメイク道具がある。朝早起きしたがデートで着ていく服やメイクが決まらない。
琴夏「もうどうしたらいいの!北星と出かけるだけなのにこんなに迷うなんて」
なかなか決まらないことにイラつく琴夏。北星との待ち合わせまでの時間が迫ってくる。
何とかメイクと服装を決め、時間ギリギリに家を出た。今日は一緒に行くのではなく、待ち合わせなので北星は待っていない。
デートの行きさきは水族館だった。
琴夏のスマホにメッセージが届く(北星から)
『もうそろそろで着く。遅れんなよ』
琴夏「早くない!?いつも休みの時は遅刻ばっかりだったのに」
スマホを握りしめながら歩く琴夏。電車に乗り、目的地までたどり着くと水族館の前に北星がいるのを見つけた。
久しぶりの私服にドキッとする琴夏。
琴夏「(い、今のドキッはなんなの!?)」
心臓の跳ね上がった瞬間に戸惑いながらも時間に間に合ったことにほっとする。
琴夏「お、お待たせ」
北星「……おう。時間ピッタリだな」
前髪を整えながら北星に近づく琴夏。お互いなんだか気まずくて視線をそらす。
北星「(今日の琴夏なんか大人っぽ……つーか、ミニスカなんか履くなよ。ほかの男に声かけられたらどうすんだ。……まあま、俺が守るけど)」
北星は煩悩を切り捨てるように心の中でつぶやきまくる。琴夏の服装はグレーのプリーツミニスカートにピンクのトレーナー、黒のバッグで来ていた。
あまりの可愛さに赤面する北星。
琴夏「……北星?どうしたの?」
北星の気持ちに気づかず上目遣いの琴夏。北星には色っぽい琴夏に映っていた。
北星「いや、なんでもねえよ。ほら、行くぞ」
琴夏「へぁ!?な、なんで……」
赤面を誤魔化すように北星は強引に琴夏の手を握り、恋人繋ぎをする。振りほどこうとする琴夏の手を北星は強く握りしめた。
〇水族館デート、館内
北星「水族館久しぶりに来たけど悪くねぇな。お、午後からイルカショーするって」
北星はパンフレットを片手に琴夏を引っ張る。水族館に久しぶりに来た北星は子供のようにワクワクしていた。だが、琴夏は北星との距離の近さに黙り込む。
琴夏「……」
北星「おい、きーてんのか?」
琴夏「ひゃあ!ご、ごめん」
何を話しても返事のない琴夏に痺れを切らす北星。北星は立ち止まると琴夏の顔を覗き込む。琴夏はそれに驚く。
北星「どうした?さっきから反応無いけど」
琴夏「い、いや……(無理もないよ!学校外でこんなに距離が近いの小学校以来だよ!?北星はいったい何を考えてるの!)」
クールな北星に戸惑いながら苦笑い。言いたいことあるけど琴夏は何も言えず、見つめるだけ。
北星「……なんだよ。楽しいと思ってるの、俺だけか?」
琴夏の反応を見て少し拗ねたように話す北星。そのことに琴夏は驚く。
琴夏「え?北星、楽しいの?」
北星「当たり前だろ?お前と久しぶりに出かけられたんだ。“偽の恋人”とはいえ嬉しいに決まってんだろ」
唐突の質問に素直に答える北星。琴夏はその言葉にドキッとした。
琴夏「あ、ありがとう……?でも、これって月島さんへ恋人であるという証明を作るためのお出かけだよね?学校外だし、ては繋がなくても」
琴夏のなんの曇りもない言葉に大きくため息を着く北星。琴夏の鈍感さに改めて呆れた瞬間だった。
北星「いい?俺たちは恋人という噂が学校に流れている。これは“恋人の雰囲気作り”の一環でもある。お前は黙って俺の言うことだけ聞いとけ。拒否権はない。……行くぞ」
有無を言わさない言い方に琴夏は黙り込む。素直に“好き”と言えない北星は自分に苛立っていた。
北星「(……あー!俺はなんでたった二文字を言えないんだ!これじゃあただの契約をこなしているだけじゃねーか!)」
琴夏「(何さ。勝手に決めて。北星が楽しいって思ってくれたこと……嬉しかったのに)」
2人は複雑な心境の中デートを進めていた。
〇翌朝の教室
クラスメイト1「おはよう〜」
クラスメイト2「おはよう〜。土日何してた?」
騒がしい教室で琴夏は自分の席に座り、スマホとにらめっこしていた。
由奈「おはよう、琴夏。どうしたの?怖い顔して、スマホ見ちゃって」
少し遅れて由奈が登校。琴夏の前の席に座り、荷物を整理する。
琴夏「おはよう〜。ねぇ、これ見てよ」
由奈「んー?どれ……」
自分のスマホを由奈に見せる琴夏。由奈は興味津々に覗き込んだ後、ニヤリと微笑む。
由奈「あら〜。いい写真じゃないの。結局、高比良くんとデート行ってきたんだ」
事情を知る由奈は楽しそう。琴夏は眉間にシワを寄せ、訴える。
琴夏「いやいや、行ってきたけど!この距離感はおかしくない!?」
スマホの中の写真はどれも琴夏と北星の距離はゼロcm。頬をくっつけたり、仲良く飲み物を飲むものの写真まである。
思い出しただけで赤面する琴夏には、少々衝撃が強かった。
由奈「おかしくないでしょ。だって恋人だよ?」
琴夏の訴えにあっけらかんと答える由奈。
琴夏「“偽の恋人”ね!?そこ、間違えないように!」
由奈の間違いを指摘する琴夏。
由奈「まぁ落ち着いて。……嫌じゃなかったんでしょ?」
琴夏「……そりゃ、幼なじみだから……」
由奈に灘められ、大人しく頷く琴夏。デートは楽しかったことを思い出す。
由奈「じゃあいいじゃない。高比良くんも満足してお互いWinWinよ」
パチッとウインクしながら訳の分からないことを話す由奈。首を傾げていると北星が教室に入ってくる。
北星「おい。なんで今日置いていった」
明らかに不機嫌な北星。先に学校にいった琴夏にイライラしている。
琴夏「べ、別に……」
北星「お仕置で、今日の放課後俺の買い物に付き合えよ」
琴夏「な、なんで……!」
不機嫌な北星は琴夏の耳元で約束を取り付けると。ニヤリと笑いながら、琴夏の長い髪をすくい上げると。その毛先に軽くキスを落とす。
その行動に何も言えなくなった琴夏は。
ただ、顔を赤くするばかりだった。