さよならの前に抱きしめて
黙り込んだ私は、二人の顔すらまともに見ることができなくて、彼らが通り過ぎる間、ずっと視線を外していた。

視界にゆらりと映った沙耶佳ちゃんが、ななせ先輩に会釈をしていたことだけは覚えている。

私は、寒さで冷えた両手にマフラーを握り、何度も何度も同じ言葉を、脳内で繰り返した。


どうして一緒にいるんだろう。学校では、二人が話してるの見たことないよ。

私の知らない所で仲良くしてたのかな……。

私ね、このあとみゃーにご飯あげに行くけど、小鳥遊くんは来るの?


小さな不安、ひとつ増えると、また増えていく。
それと重なるように、目頭がじんと熱くなって体は重たいんだ。


来る、よね。だって、昨日言ったもん。

“世話していい?”って。来ないはずないよ。



淡い期待をいつまでも、透明な心にのせて私は公園で待ってた。


だけど、小鳥遊くんは来なかった。
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