それぞれの幸せの形

今知る事実

あのとき、実は俺は留学の話を担任から聞かされていた

「河口、お前この前の映画のコンクールで優勝しただろ?
そのときに審査員だった人がお前のこと結構気に入ってな、その人からお前宛の留学の話が来てるんだ、
期間は1年、どうだ?悪くないだろ?
前から海外で一回経験積んでみたいって言ってただろ?」

その話を聞いたとき、すごく嬉しかった
勉強も運動も何もかも周りの友達から劣っていると感じていた俺にとっては英語は唯一の武器だった

でもその一方で麗奈と1年間も離れないといけない

今の俺にとって麗奈のそばを離れるという選択肢は考えられなかった
麗奈や周りの友達がいたから今の自分がいる
今学生生活を楽しめている
特に俺の中で麗奈は生活の全てだった
それに俺と1年も離れたら麗奈はどう思うんだろうか、
今までほぼ毎日一緒にいる生活を約4年間続けてきて
これから1年間も離れたら、、
そう思うとどうしても留学より麗奈を優先してしまう俺がいた

だから留学の話は断った
別に留学なんて高校の時じゃなくてもできる
社会人になって、もっと麗奈との関係も安定してからに留学しようかな、なんて軽く考えていた

だから麗奈には何も相談してなかった

でも、運悪く俺と担任の話を麗奈に聞かれてしまっていた

その留学には大学進学の特別推薦の特権もあり、将来英語を活かせるっていうことで俺ら英語に力を入れていた学生からは人気の制度だった

そのことを知っていた麗奈は俺が留学を断ったことについて、自分のせいじゃないかとひどく悩んでいたらしい
自分のせいで智樹の足枷になってしまっているのではないかと

それを考えて、悩んだ結果、俺と別れるという選択肢をとったというわけだった

麗奈はこの話をずっと幼いながらも可愛がってた柚葉に話していたらしい
麗奈があまりにも泣きながら悩んでいたから幼い柚葉には鮮明に記憶に残っていた
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