キミのために一生分の恋を歌う② -last stage-
私の病室を出ると、デイルームに座った三人。
「随分、記憶が抜けてるな⋯⋯」
冬夜は深刻そうにつぶやいた。
「お兄ちゃんがどれだけお姉ちゃんにとって大切な存在だったか、これで解ったでしょう。お母さんと二人でいたんなら少しくらい連絡くれたって⋯⋯」
「小春⋯⋯ごめんね。お母さん何もしてあげられなくて」
「違う。母さんのせいじゃない。僕にとっても同じだったんだ。僕も小夏が好きだった。4年前のあの時、一生特別で、一生、愛したいと願ってしまった。だからこそ距離を置かなければ、僕達は家族のままでは居られなかった。それに僕は病気で、体も動かなくて。もう何の役にも立たない。小夏の負担になるだけだから遠ざけたんだ。そんな僕をずっと支えてくれていた、母さんは何も悪くない。悪いのは全部僕だ」
「お兄ちゃん⋯⋯」
冬夜は、泣きそうな顔で笑った。
「bihukaの歌が聴こえても、ずっと聞こえないフリをした。僕に向けられた切ない恋の歌だと知っていたから。だけど、この夏から彼女の歌声がガラリと変わった。それはだんだん、自由になっていった。飛ぶことを覚えたばかりの小鳥みたいに、不安定だけど、ひたむきに前だけを向いていて」
「それは⋯⋯諏訪野先生が⋯⋯」
「そう。君が、晴が、小夏を変えたんだね」
気が付くと、目の前に晴が立っていた。
「僕の方が小夏に塗り替えられたんですよ。もう骨の髄まで彼女を愛しています」
「ふふ、言ってくれるね」
「僕が小夏を元に戻します。お願いします、あと少しだけ2人になれる時間をください」
晴は深々と頭を下げた。
すると目の前にお母さんが来て頭をあげるように言った。
「もういいんですよ、諏訪野先生」
「母さん⋯⋯」
「冬夜、どんなに事情があったとしても、私たちは小夏たちのことを突き放した。そんな私たちに、何かを言う権利もないのよ」
「諏訪野先生、どうかお姉ちゃんのことをお願いします。お姉ちゃんは今も諏訪野先生のことだけを1番に想って、待っています。それが私には分かるから」
「はい⋯⋯頼まれました」
そして晴は、冬夜に握手を求めた。
「初めて出会った時の彼女は切実に貴方を求めていて、僕はそんな彼女を美しいと思ったから。救われたんです。だから、これまで小夏を愛してくれてありがとうございました。貴方が生きていてくれて、良かったです」
「晴は全く覚えてないだろうが、僕は君や和臣のオムツも変えたんだ。まぁいい。あとはよろしく⋯⋯お願いします。どうか幸せにしてやってくれ。それと」
「はい?」
「晴のバイオリンはとても良かった。君は耳がとても良いんだね。今度僕が直々に指導してあげるよ」
「ハハ⋯⋯お手柔らかに頼みます」
「晴がいてよかったよ。小夏が出会ったのが君でよかった」
2人は見つめ合い固く握手を交わし、互いを慰め合うようにハグをした。
「随分、記憶が抜けてるな⋯⋯」
冬夜は深刻そうにつぶやいた。
「お兄ちゃんがどれだけお姉ちゃんにとって大切な存在だったか、これで解ったでしょう。お母さんと二人でいたんなら少しくらい連絡くれたって⋯⋯」
「小春⋯⋯ごめんね。お母さん何もしてあげられなくて」
「違う。母さんのせいじゃない。僕にとっても同じだったんだ。僕も小夏が好きだった。4年前のあの時、一生特別で、一生、愛したいと願ってしまった。だからこそ距離を置かなければ、僕達は家族のままでは居られなかった。それに僕は病気で、体も動かなくて。もう何の役にも立たない。小夏の負担になるだけだから遠ざけたんだ。そんな僕をずっと支えてくれていた、母さんは何も悪くない。悪いのは全部僕だ」
「お兄ちゃん⋯⋯」
冬夜は、泣きそうな顔で笑った。
「bihukaの歌が聴こえても、ずっと聞こえないフリをした。僕に向けられた切ない恋の歌だと知っていたから。だけど、この夏から彼女の歌声がガラリと変わった。それはだんだん、自由になっていった。飛ぶことを覚えたばかりの小鳥みたいに、不安定だけど、ひたむきに前だけを向いていて」
「それは⋯⋯諏訪野先生が⋯⋯」
「そう。君が、晴が、小夏を変えたんだね」
気が付くと、目の前に晴が立っていた。
「僕の方が小夏に塗り替えられたんですよ。もう骨の髄まで彼女を愛しています」
「ふふ、言ってくれるね」
「僕が小夏を元に戻します。お願いします、あと少しだけ2人になれる時間をください」
晴は深々と頭を下げた。
すると目の前にお母さんが来て頭をあげるように言った。
「もういいんですよ、諏訪野先生」
「母さん⋯⋯」
「冬夜、どんなに事情があったとしても、私たちは小夏たちのことを突き放した。そんな私たちに、何かを言う権利もないのよ」
「諏訪野先生、どうかお姉ちゃんのことをお願いします。お姉ちゃんは今も諏訪野先生のことだけを1番に想って、待っています。それが私には分かるから」
「はい⋯⋯頼まれました」
そして晴は、冬夜に握手を求めた。
「初めて出会った時の彼女は切実に貴方を求めていて、僕はそんな彼女を美しいと思ったから。救われたんです。だから、これまで小夏を愛してくれてありがとうございました。貴方が生きていてくれて、良かったです」
「晴は全く覚えてないだろうが、僕は君や和臣のオムツも変えたんだ。まぁいい。あとはよろしく⋯⋯お願いします。どうか幸せにしてやってくれ。それと」
「はい?」
「晴のバイオリンはとても良かった。君は耳がとても良いんだね。今度僕が直々に指導してあげるよ」
「ハハ⋯⋯お手柔らかに頼みます」
「晴がいてよかったよ。小夏が出会ったのが君でよかった」
2人は見つめ合い固く握手を交わし、互いを慰め合うようにハグをした。