キミのために一生分の恋を歌う② -last stage-
飛行機はそのまま羽田空港を出発して新千歳空港へと向かう。
高度上昇による気圧の変化が私の状態に良くないらしく、晴は付きっきりでそばにいてくれた。

「晴……ちょっと胸が苦しい」
「しんどいな。後ろはみんな気にしなくて大丈夫だから、もっと席を倒そう」
「諏訪野先生、酸素マスクつけますか?」
「そうだね」

晴は背中をゆっくりとさすってくれ、ゆかさんが心配そうに酸素マスクをつけてくれた。
東条先生もすぐに様子を見に来てくれた。

「小夏ちゃん、どう?」
「胸が……苦しいというか……痛くて」
「晴、呼吸抵抗は見てたのか」
「はい、気管支の狭窄が酷い影響だと思います」

それを聞いてサチュレーションの表示を読み、東条先生は黙ったまま聴診器をつけて聴診をする。

「サチュレーションと胸の音はまだ大丈夫。痛みについてはもう少し強くなったら考えよう。小夏ちゃんは少し疲れただろ? 寝ていけそうなら、そうしようか」
「はい……」
「晴、鎮静剤を使う」
「準備します」

晴が注射器に薬液を入れて、腕を消毒する。

「ちょっと痛いよ」

と同時に痛みがはしる。晴は腕を軽くもんで痛みを和らげてくれる。
それと同時にゆっくりと意識が薄れていく。

「晴、小夏ちゃんが眠ったらモニターつけて、高瀬さんは定期的に血圧測定して報告して」
「はい」
「小夏、眠ってても大丈夫だからね。僕たちがずっと見てるから」
「なにも心配ないよ。小夏ちゃん」

私はもう話せなくて、目を瞑りゆっくりと頷くのがやっとだった。
< 75 / 97 >

この作品をシェア

pagetop