御曹司様の一目惚れ人生ゲーム〜私はただ愛されたかっただけ〜花村三姉妹   葉子と仁の物語

彼女

クリスマスツリーが広いロビーの中央に置かれていた。 日曜日だからか、カップルが多く、華やかな光の中で写真を撮っている。

妹の美愛とクリスマスの思い出に花を咲かせていた、その時。

どこからか、猛禽類のような視線を感じた。思わず、そちらに目を向ける。

えっ、だ、誰……?

――私を、見てる?

視線の先にいたのは、ひときわ目を引く男性だった。ただ立っているだけなのに、空気が違う。

なのに――その視線に、息が詰まる。

……なに、これ。綺麗、なのに。

怖い。

その時、男性の瞳の奥に、わずかに光るものが見えた。

理性じゃない。もっと、原始的な――獲物を見つけた時のような光。

ゾッ、と背筋が震える。

頭の奥で、警笛が鳴った。

『この人はキケン、また傷つく』

反射的に視線を逸らす。

――見てはいけない。

そう思ったのに。

ここは女性に大人気で、予約の取りづらいシックなラグジュアリーホテル、ホテル9(クー)。


もしかして、服装がカジュアルすぎたかな?
きっと場違いなんだ、デニムで来ちゃったから。


頭の中で自問自答している私をよそに、美愛が彼に挨拶をしに行った。彼女に優しい笑顔を向けて会話をしている彼の姿に、当惑した。先ほど私に向けられていた視線とは全く違っていたから。


再び警笛音と口の中に嫌な苦味が広がっていく。


あぁ、あの時のようだ……。
忘れたいあの日が蘇る。


美愛に手を引かれ、現実に戻された。


そうだ、今は妹の問題解決が先だ。彼女の婚約破棄になりかねないこの状況を片付けないと。


もうみんな集まっているらしく、私と彼は目で軽く挨拶をし、会議室へ急いぐ。


そう、これが九条仁との出会いだった。






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