御曹司様の一目惚れ人生ゲーム〜私はただ愛されたかっただけ〜花村三姉妹   葉子と仁の物語
久しぶりに警笛音楽が鳴り響く。あの言葉が頭の中で繰り返す。口の中に広がる嫌な苦味。


『この人はキケン、また傷つく』




素早くワンピースを着て、ケータイでタクシーを呼んだ。待ち時間30分はこの時間帯にしたら早い方だろう。ホテルの外で待機しているタクシーに乗り込み、自分のマンションへ帰る。


不思議と涙は出ない。
少しの間、何も考えたくない。




自宅でシャワーを浴び、頭をクリアにした後、リビングに戻る。力なく座ったソファーで胸の苦しさを感じ、次第に現実に戻された。


一体何が起きたんだろう?
もしかしたら、全部夢?
ううん、夢じゃないよ、この体の気だるさは。


仁はプロポーズしてくれた。
なぜ?
付き合ってまもない頃からずっと。
なぜ?
やはり彼くらいの年齢だと、結婚していた方が世間体もいいから?
結婚すれば都合のいい女性を探す必要もないから?


憶測が頭を埋め尽くす。彼は愛し合った後、何も言わずにいなくなった……、これは事実。


ふと、仁の言葉が脳裏を(かす)める。


『もちろん、女性との経験はそれなりにある。自慢できることじゃねぇが、全て遊びだった』


全て遊び、遊び、遊び……。
私が出した条件に対する復讐?
条件のおかげで女遊びができないから?
利用されたの、私?
でも、プロポーズしてくれたよね?
優しくしてくれたよね?
ジェイドとは違うよね?


考えれば考えるほど、頭が混乱し、心が掻き乱される。


やっぱり、油断してはいけない。自分を守らなければ。二度とあんな思いをするものか。


とりあえず、こっちから何も聞かずに仁の出方を見よう。

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