御曹司様の一目惚れ人生ゲーム〜私はただ愛されたかっただけ〜花村三姉妹   葉子と仁の物語
私の頬を、ガラス細工を扱うように触れる大きくて骨ばったその手、私を呼ぶ吐息混じりの声、こんなに優しく愛してもらっているのは初めてで、思わず涙が滲む。そんな私を心配して気遣ってくれる仁。


「ごめん、嫌だったか? 痛いか?」

「ち、違う。大丈夫。お願い、ぎゅーッと抱きしめて……」

「おまえが望むなら、何でも叶えてやる」


これが好きな人と愛し合うってことなんだ。
これが好きな人に愛されるってことなんだ。


この時、はっきりわかった。もう後戻りはできないと。


この先、彼の呪縛から逃れられないことを。




暗い部屋の中、レースのカーテン越しに見えるビルの明かり。まだ夜は明けないみたいだ。


どのくらい寝てしまったんだろう?


仁に愛された余韻に浸りながら、気だるい体を起こし、静かに水を求めてキッチンへ行く。冷蔵庫からペットボトルを取り、カラカラの喉を潤した。


リビングの時計は夜中の2時を少し過ぎたことを示している。


また静かに寝室へ戻り、ハッと気がついた。


仁がいない……、ベッドにいない。


探しに行ったトイレにも浴室にも彼の姿はなかった。ただ浴室が濡れていたので、彼が使ったのだとわかる。


急いで寝室に戻り明かりを点けた。おもむろに自分が寝ていた隣側に手を置く。そこには人の温もりを全く感じない。私たちが愛し合った後、彼はここで体を休めなかったのだ。


慌ててリビングの明かりもつけ、探し始める……、彼が残したかもしれないメモを。しかし、私の期待を裏切って仁からのメモはどこにもなかった。

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