僕は彼女をこよなく愛している
一方の実陽。
両親と外で食事をし、今は実家にいた。

「もうそろそろ、帰るから」

そう言って、立ち上がる実陽。

「あ、そう…
気をつけてね。
霞月さんにも、よろしくね!
あとこれ…
二人で食べなさい」

実陽の好きなおかずが沢山入った弁当を渡された。
「うん」

受け取り「今度…るなちゃんを連れてくるから…」と呟くように言った。

そして玄関に向かうと、父親が「駅まで一緒にいいか?」と追いかけてきた。

小さく頷く、実陽。
二人は、一緒に家を出た。


――――――――――
――――――…………………

実陽は、久しぶりに父親に会って戸惑っていた。
最後に父親に会ったのは、中学三年の夏。

それからは、一度も会ってなかった。
久しぶりに会った父親は、かなり落ち着いていた。

実陽の父親なだけあって、とにかく明るくていわゆる陽キャラな父親。
友人が多く、恋人を取っ替え引っ替えする人たらし。

しかし落ち着きがなくて、考える前に即行動を起こすフラフラした男だった。

三度の不倫が発覚した時も、ヘラヘラしていたくらいだ。

今日会う寸前まで、会ったらどんな文句をぶつけてやろうかと考えていた実陽。

しかし実陽に頭を下げて謝り、今後は誠実に尽くすと約束したのだ。

その姿を見て、実陽は少なからず動揺したのだ。

あんなに嫌いで、軽蔑していた父親のことを受け入れていた。

「どんな人なんだ?」

「え?」

「彼女」

「綺麗だよ、とっても。
外見も、内面も。
クールだから、いつもポーカーフェイスでほとんど笑わないけど、誰よりも他人思いで、優しくて真っ直ぐな子」

「そうか!
実陽、本当に好きなんだな!(笑)彼女のこと」

「大学卒業したら、結婚したいと思ってる。
それくらい、好き」

「そうか…!
実陽は、偉いな。生まれた時から……」

「え?」

「実陽は、生まれた時から自慢の息子だ。
よく笑って、よく泣く。
誰にでも自分から声をかけて、その人の中に溶け込んで仲良くなってくんだ。
頭も良くて、成績もいつも上位。
まぁ…中学ん時は“俺のせいで”ボロボロだったが…
高校も、学年上位だったんだろ?
母さんに聞いた。
友達も多くて、明るくて人気者だったって!
更に、運命と呼べる相手をもう見つけてる。
ほんと…良い息子だよ、実陽」

「別に…」

「俺は、母さんを“運命と呼べる相手”だと気づくのに、今の今までかかったからな……!(笑)」

「………父さん…」

ずっと、下を向いていた実陽。

父親を見ると、優しく笑っていた。

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