あやめお嬢様はガンコ者
なんとか住所を聞き出し、急いでタクシーで向かうと、あやめさんは明らかに泣いたであろう赤い目で「泣いてない」と言い張る。
「玉ねぎを切ったから」と言ってふいっと拗ねた顔をした時には、思わず笑ってしまった。

料理を振る舞ってくれ、ちゃんと玉ねぎ入ってるでしょ?とムキになるあやめさんは可愛かったが、とにかくひとり暮らしは危険すぎる。

何度訴えても頷かないあやめさんに、あの不審な男性のことを話してしまおうか?とも思ったが、あやめさんを怖がらせる訳にもいかない。

それにあやめさんは、自分の素性がバレてないと思い込んでいる。
社員があやめさんのことを、社長令嬢なのにいい人だと話している事実を知らせることも出来なかった。

どうすればいいかと考えた結果、俺が送り迎えするのが今出来る最善の方法だと思ったのだ。

あの不審な男性がどんな動きをするか分からないのなら、しばらくはあやめさんを一人にはさせられない。

固く心に決めて駅までの道を二人並んで歩いていると、あやめさんが控え目に話しかけてきた。
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