色恋沙汰はどこまでも


 羽柴さんと初めて出会ったのは小学生の時だった。

 今でこそ背は伸びてそれなりの体格になったけど、あの頃は本当に小さくて、近所の公園に行くとそこに君臨するガキ大将みたいな奴によくイジられてた。そんなの軽く受け流してほっとけばいいのにそれがどうしても悔しくて、負けん気だけは一丁前に強かったから、ソイツに返り討ちにされるのが日常みたいになってた。

 あの日もいつものようにガキ大将に逆らってて──。

 「オマエちっせぇくせに生意気なんだよ!」

 「俺達だってここの公園で遊びたいんだ!」

 「知らねーよ!ここは俺様の公園だ!」

 「みんなの公園だろ!」

 「はっ、チビは痛い目みたいとわからないんだな!」

 殴られる、そう思って歯を食い縛ってぎゅっと強く目を瞑った。情けないけどこれが現実、結局はいつもと変わらない。みんなの前でカッコつけたいとかそんなんじゃなくて、弱いくせにこういう理不尽な奴がどうしても許せないってだけなんだ。こんなの勝てない、だって体格の差が歴然で……って、あれ?痛く、ない?

 強く瞑ってた目蓋をゆっくり上げると、ガキ大将の拳を片手で止めていたのは綺麗な女の子だった。

 「オマエなんなんだよ!?」

 「それ、こっちのセリフなんだけど。弱いものイジメとかだっせぇことしてんなよガキが」

 「あ!?」

 ガキ大将が女の子に殴りかかろうとして『危ない!』と言おうとした。けど、あのガキ大将が呆気なく倒されてて俺達は唖然とするしかなかった。

 「二度とでけぇツラすんな」
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