色恋沙汰はどこまでも
 だからもう逃げないって決めたんだ、ちゃんと想いを伝えるって。

 羽柴さんにとって何気ないことで、気にも止めない出来事だったと思う。羽柴さんがたくさん助けてきた人の内の、ただ1人に過ぎないってことは重々承知してる。だけど俺にとって羽柴さんは、たった1人の存在なんだ。

 臆病な俺はどうしようもなく好きなんだ、羽柴さんのことが。

 だからもう迷わない。緊張するし、キモい奴とか思われないかなって不安とかもあったけど、なにより積極的にいくって決めたから、もう後戻りはしないしできない。

 「久しぶり、羽柴さん」

 隣に並んだ羽柴さんにそう声をかけると、誰だっけ?みたいな顔をして俺を見上げてる。近くで見る羽柴さんは本当に可愛らしくて綺麗な女の子で、俺なんかが釣り合うわけないって痛感させられる。ま、挫けるつもりはないけどね。

 「って言っても羽柴さんが俺のこと把握してるはずがないか」

 「ああ……うん、ごめん。同中だっけ?」

 ちょっと申し訳なさそうにしてるのも可愛らしくてたまらない。

 「そうそう、西中。羽柴さんとは1回も同じクラスになったことなかったし、俺バスケばっかやってたからさ、羽柴さんが把握してないのも無理ないよ」
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