色恋沙汰はどこまでも
『馬車馬のように働かせるぞー』
明らかに私を見ながら言った担任を睨み付けると『書け、さっさと』と口パクしてきた。1発殴っていいかな。
光を失った瞳で担任を見ると、キュンですポーズをしてウインクしてきやがった。それでも教師かおまえ。2発殴っていいかな。
ていうか、絶対面白がってるよね?この状況を。憂鬱な教員生活にちょっとした娯楽見っけ~みたいな感じで楽しもうとしてない?この教師。マジ最低、信じらんない。
「書き終わったらそのまま待ってろ~」
そう言いながら紙切れになにか書いてる様子の担任。で、適当にクラスメイト達へ声がけしながら私のほうに来て、通りすぎ様にバレないようコソッと紙切れを机に置いてった。なに考えんだろ、うちの担任は。
二つ折にされた紙切れを開いて見てみると── 《俺のライクID、連絡してこい。P.S. これ完全にプラベ用のライクだから他に教えんなよ、絶対に》と綺麗な字で書いてあって、ガサツそうな人なのに字はめちゃくちゃ丁寧だなーとか感心して……る場合じゃない。
チラッと担任のほうへ視線を向けると、ふざけた顔してるって思ってたんだけど、おちゃらけるわけでも茶化してるわけでもなく、真顔な担任にどういう反応をすればいいのかわかんなくて目を逸らした。
まあ、あれだよね。あんな人だけど一応生徒を心配してくれてるんだよね?この世に1つしかないSSSなんてもの扱うはめになる生徒のことが、ほんの少し心配になってるんだよね?たぶん。