色恋沙汰はどこまでも
 だったら他選ばせろや、としか思えないけど自分の直感で選んだやつだし、ちゃんと適合してるわけだし?たぶん。『たぶん』なんて不確定要素満載なの嫌すぎるけど、もうなんでもいいや。考えるのもダルいし、今さら選び直すのもめんどい。

 ま、大したこと書いてないでしょこんなの。ろくに目を通すこともなく契約書にサインした、もちろんSSSの擬人化文房具を使って“羽柴凛子”って。

 ((はじめまして))

 ん?

 ((日髙聡(ひだかさとる)と申します。あなたが運命の人ですね))

 んん?

 ((僕の愛おしい人(マイハニー)))

 んー、疲れてんのかな?幻聴が聞こえる。

 ((心待にしておりました。あなたに出逢えるのを──))

 「先生、幻聴が聞こえる(体調が悪い)んで保健室にっ」

 「ククッ、幻聴だなんて酷いですね」

 ん?なんだろう、めちゃくちゃリアルに聞こえてきたような?

 次の瞬間、女子達の悲鳴に似た叫び声が教室に響き『こんな時に敵襲か?』そう身構える私は相当イカれてる。

 「凛子様」

 「……」

 嘘でしょ、気配がまるで無かった。この私が呆気なく背後をとられるなんて、かなり鈍ってんのかな。いや、相手がかなりの手練れって説が濃厚。

 「凛子様」

 あれ?握ってたはずのシャーペンがない。
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