色恋沙汰はどこまでも
 もしかして、もしかしたりして?

 「改めまして、日髙聡と申します」

 後ろから私の顔を覗き込むように屈んできた何者かとバッチリ目と目が合った。一瞬、呼吸をするのを忘れてしまうほど綺麗に整ったご尊顔を目の当たりにして、柄にもなく動揺してしまった。この世にこんなイケメンが存在していいの?と思うほどの容貌で、なんか無駄にいい匂いがする。

 「あぁ……なんとお美しい」

 え、ちょ、なに、どうなってんの?擬人化文房具ってこんな唐突に擬人化する系のやつ?これ故障してんじゃない?

 「僕はあなたに逢うべくして生まれたと言っても過言ではありません」

 それは過言すぎるのでは?

 「思う存分、僕の太くて固い凛々しい竿を握ってあれこれしてください」

 なるほど、やっぱこれ故障してんだわ。

 「先生、これ不良品」

 「ハハッ、不良品だなんてご冗談を。美しさとユーモアも兼ね揃えてらっしゃるとは」

 ご冗談はその整いすぎた容姿だけにしてくんない?

 「先生、これ不良品」

 「ククッ、可愛らしいお方ですね」

 これ、なんのバグですか?

 「先生、これ不っ」

 「僕達は“運命”という“赤い糸”で結ばれているんです」

 「は?なにそれ」

 「おや?運命という赤い糸をご存じではない?」

 運命だの赤い糸だの、そんな戯れ言なんて信じてるわけないでしょ。現実は付き合って別れての繰り返し。運命だの赤い糸だのあるんなら、こんなことになってないでしょ?
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