色恋沙汰はどこまでも
 私は脳内で菊池桃花を容赦なくシバいた。そんな私に救いの手を差し伸べてくれたのは、敏腕擬人化文房具であろう黒井さん。

 「躾がなっておらず申し訳ございません、羽柴様」

 私から菊池桃花をひっぺがして無理やり頭を下げさせてる黒井さんの瞳は、『ことごとく呆れ返ってなにも言えません』って言ってるようだった。それには激しく同意。

 「てめっ!黒井!女が簡単に頭下げるもんじゃねえ!!」

 はぁぁ、なんかもう既に学園生活に不安しかないんだけど。

 ── 情報量が多すぎた初日(入学式)がようやく終わった。

 「んじゃ、アタシこれからバイトだからまた月曜なぁ~リンリン、チルチル!クソ陰キャもシンドーもまたな~」

 「はいはい、じゃーね」

 「じゃあね~ん、ももちゃん」

 「さっ、さよっ、さようなら!」

 「またね、菊池さん」

 それから新藤君は用があるとかで、松坂君は家業の手伝いがあるとかで、結局はイツメンになるオチね。まあこれが一番落ち着くしラクだけど。

 「ほーんと凛子のことが愛しくて仕方ないんだね~、日髙さぁん」

 嫌な予感しかしない。

 「ええ、もちろん」

 おまえ、マジで気配消すのやめろ。ていうか、当然のごとく顕現してくんな。

 「じゃ、あたしこっちだから~」

 「え?なんで?」

 「あー。かくかくしかじかで~、しばらくおばあちゃん家に行くの~」

 『かくかくしかじかで~』か、なるほど。良守(よしもり)さんと杏里(あんり)さんが喧嘩中ってことか。めちゃくちゃラブラブでめちゃくちゃ仲いいんだけど、一度夫婦喧嘩が勃発すると長いからなぁ、あのふたり。ま、うちの親も似たり寄ったりだけどね。
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