色恋沙汰はどこまでも
 「だったらうちに来る?」

 「それ思ったんだけどぉ、おばあちゃんが可愛い孫と一緒にいたいんだって~。可愛いよねえ」

 「そっか。なら行ってあげないとね」

 「うん!じゃ、またね~ん」

 ブンブン手を振って去っていく美智瑠に私は控えめに手を振り返した。私とは違って女の子らしくて可愛いな……って、隣から感じるうざったい視線。

 「2人きりになっちゃいっ」
 「も ど れ」
 「ククッ。そんなつれないこと言わないでください、凛子様」

 良くも悪くも目立つのよ、この男。さっきからこの辺一帯がザワザワしちゃってるし、なんでこんな無駄に整いすぎた擬人化文房具が出来上がったわけ?もっとこうブサイクにするとかできるでしょ。ていうかマジで交換したい。

 「も ど れ」
 「いやぁ、どうしましょう。いちご飴でも買いに行きませんか?1本だけ買って2人で仲良く食べましょう、凛子様。あ、間接キスっ」
 「もうっ、うっさい!!戻れ!!」

 パッと姿を消した日髙に戻れと命令した張本人である私はポカンと間抜け顔をして、あの日髙がすんなり姿を消したことに驚きを隠せない。擬人化文房具って詳しいこと公に出してないから私達一般人が把握してるのなんて、ほんのちょっとした情報でしかない。担任が言ってた『契約者の命令は絶対』が日髙にもちゃんと通用するってこと?いや、でも教室で命令した時はこんなパッと消えなかったよね?

 「ぶどう飴も捨てがたいですね」
 「まあ、たしかにね……って日髙!?」

 ヌルッと現れた日髙、そして私はなんとなくだけど日髙の弱点を見つけたかもしれない。試してみる価値はあるかも。
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