色恋沙汰はどこまでも
 龍は高校行ってないから擬人化文房具がどういうシステムなのか知らないよね。まあ、そもそもがSSSなんてこの世に日髙しかいないわけだし、謎に包まれすぎて製造者くらいしか把握できてないんじゃない?なんていうか、なんとなくだけど日髙本人も自分自身のこと全て把握しきれてないって雰囲気が垣間見えるから、本当に私がはじめての契約者なのかも……?

 「とりあえず日髙……って」
 「消えましたね」

 勝手に出てくるわ、勝手にいなくなるわ、もうなんなの?あいつ。

 「ごめんね、龍」
 「別に凛子さんが謝ることじゃないでしょ。つかスペシャルズってあんなもんなんすか。物騒な世の中になったもんで」
 「それあんたが言う?」
 「俺は平和主義なんで」
 「どの口が言ってんのよバカ」

 無愛想でなに考えてるか分かんないことだらけな龍だけど、なんだかんだ私のこと心配してくれてるってのは伝わってくる。まあ、過剰ではあるけどね。龍がこうなったのも、私に敬語使ったり“さん”呼びするようになったのも、おそらくあの時のこと引きずってるんだろうなとは思う。気にしなくていいって何回も言ったけど、龍はこの調子だからもう好きにさせてる。

 「で?お母さんとお父さんいつ頃帰ってくんの?」

 2人でテレビを観ながらソファーで寛いで『ま、長くても1週間くらいでしょ』とか呑気に思いながらお茶を口に含んだ時だった。

 「そうすね。まあ、半年はかかるんやない」

 「ブーー!!」

 「きったね。なにしてんすか、凛子さん」

 口に含んでたお茶を思いっきり噴射させて『は?半年とかヤバすぎない?』と呆気にとらてる私と、噴射したお茶を気だるそうに拭き始めた龍。
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