色恋沙汰はどこまでも
 日髙の手が下腹部から這うように上がってきて、谷間にスッと手を滑らしながらフロントホックに指をかけてピタリと止まった。色っぽい瞳で私を見下ろす日髙にドドドドと心臓が飛び出そうになって、もうキャパオーバー。

 「わ、わかった、わかったから!」

 「へぇ、なにが『わかった』のでしょうか」

 これ以上は無理、マジで無理、こいつマジでやりかねない。キスされるほうがマシ、絶対そのほうがマシ……だけど、やっぱ嫌、絶対嫌、ほんっと嫌!!こんなキャラじゃない、こんなはずじゃないのに、なんでこの私が言いなりになんないといけないの!?

 その時、コンコンッと部屋のドアを鳴らされて、それが誰なのかは言わずもがな。

 「凛子さん、飯できたっすけど」

 今、一番来てほしくない人物が来てしまった。龍はむやみやたらに私の部屋を開けたりしない。ああ見えて本当に気遣いなのよ、龍は。このクソ変態野郎とは違ってね。

 「凛子さん」

 あーヤバいヤバい、どうしようヤバい。

 「凛子様」

 「なによ……っていうか退け!」

 「キスしてくれたら今日はもう勝手に出てきません。どうです?」

 『どうです?』じゃない、違う、そうじゃないだろマジで。本来勝手に出てくるもんじゃないの、元来契約者の意思でしか出てこないのよ、そういうもんなのよ。あんたがイレギュラーなだけでしょうが。そのくせに交渉してこようとする神経の図太さもSSSって?笑わせんなクソ変態野郎が!
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