色恋沙汰はどこまでも
 「ぶっ壊すよ、本当に。あんたみたいなの要らないんだけど」

 冷めた声、死んだ魚のような目で私は日髙にそう言った。すると、一瞬だけ日髙の雰囲気がズシッと重くなって、背筋がゾクッとするような恐怖に似たナニかを感じる。今まで喧嘩なんて腐るほどしてきた、怖いとか思ったこともない。なのに、なんなの……?こいつ。

 「ハハッ、そうですか。それはそれで興奮しかしませんけどね?で、どうします?僕はこのまま続けちゃっても一向に構いませんが」

 「っ!?」

 フロントホックにかかってた指でパチンッと呆気なく外されて、心の中で声にならない声で叫びながら暴れる私をニタニタしながら押さえてる日髙。

 「んっ」

 日髙の手が、日髙の手が!!下乳に触れそうなんですけど!?

 「僕はこのまま触れて舐め回してもいいんですけどね、凛子様」

 「っ!する、するって、わかった、するから触んな!」

 「そうですか、そこまで仰るのなら仕方ありませんね。凛子様はどうしても僕とキスをしたいと」

 「おまえマジで覚えてろ、絶対泣かす」

 「ククッ。SMプレイで僕を啼かせてくれるなんてご褒美にすぎません」

 「ちげーよ、黙れクソ変態」

 コンコンッと部屋のドアを再び鳴らされた音にドキッと心臓が跳ね上がる。

 「ほら、早くしないと凛子様」

 あーーもういい、どうでもいい、キスなんてキスでしかないし、別になんだっていい、どうとでもなれ。これに深い意味も理由もないんだから、所詮唇と唇が触れるだけ、それだけのこと。

 私の上に跨がってる日髙の胸ぐらを掴んで引き寄せた。
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