(二)この世界ごと愛したい
おーちゃんを残して来た拠点に戻ると、おーちゃんはスヤスヤと寝息を立てて眠っていた。
え、可愛いんですけど。
「…っ。」
近くで見たいと思い、側に寄って観察。
これが今すぐ悶えてしまいたいくらい可愛い。何だこの生き物は。
「……。」
黙ってひっそりとその寝顔を眺める。
だってもう永遠に見てられる。
「…癒されるー…。」
「…ほな俺もよろしく。」
急にぱちっと目を開けたおーちゃんと、一瞬目が合った。
目が合ったのに、私の視界だけが回る。
「おっ、起きてたの!?」
「さっきな。あんだけジロジロ見られたら誰でも起きるわ。」
回された視界に映っているのは、天井と不機嫌そうなおーちゃんの顔。
つまり、回し倒されたわけですね。
「…うそつき。」
「寝てるなんて言うてへんわ。」
「…どいて?」
「お嬢は勝手に癒されててんから、俺も勝手に癒されようかな思て。」
だから、私にそんな力はないのよ。
癒しのパワーがあるなら身に付けたいですよ。
「じゃあ鏡を見てるべきだと思う。」
「…俺自分の顔好きちゃうし。それよりもっと好きな顔が目の前にあるんやけど、どうしたらええ?」
「ど…どう…って。いやいや、顔で私はおーちゃんに太刀打ち出来ません。」
「まるで他は太刀打ち出来るみたいに言うやん。」
そりゃあね!
顔は無理!剣でも無理!しかし負けないこともあります!!
「頭の出来は負けません。」
「上等や。」
声にせずともムカつくと書いてある顔が、私に降って来た。
この体勢で生意気なこと言い過ぎたと反省。