(二)この世界ごと愛したい
水面下でるうの財産を狙う算段をトキと嬉々として話しているところに、アキトがやってきた。
「お前等、考えが碌でもねえぞ。」
「るうの財力はすごいんですよ。私こないだ書店丸っと買ってもらったもん。」
「…甘やかしが度を超えてるなあ。」
「それよりアキトどうしたの?」
アキトはお部屋で休んでいるものと思っていた。
「シオンが来てリン貸せってうるせえから逃げてきた。」
「…アキトごめん。どうにかリンにシオン運んでもらわないとエゼルタの会議に出られないんだ。しかも今回出ないと流石のシオンでも罰則もあり得るし。」
「何で俺がアイツに花持たせなきゃならねえんだよ。」
アキトは頑なに首を縦には振らない。
ここはアキトの城で、現状面倒見てもらってる私はもちろん何か言える立場ではないし。
…とりあえず黙りまーす。
「ここを我慢してくれたらリンがアキトにイイコトしてくれるって。」
「…はい!?」
「だからアキト大目に見てよ。」
「よし分かった。どうせ俺もちょっと行くとこあるしなあ。」
アキト物分かり良すぎるよ!?
てかイイコトって何!?初耳ですけど!?
「雨の中行くの?」
「近くだから大丈夫だ。」
「気を付けてよね。」
お二人さん?仲良くお喋りしてますけど?
「私、そんな話聞いてなっ…んむ!?」
「リンは悪い子になっちゃうの?そんなことないよね?」
トキに口を手で押さえられて喋ることを許してもらえない。
そしてこの脅迫擬いのおねだり。
「リンはいい子だよね?」
「……。」
恐ろしく黒いトキの笑顔を前に、私は頷く以外の選択肢がなかった。
それを確認してトキが私を離し今度はにっこり笑う。
「やっぱり俺はリン好きだなー。」
「き、恐縮です。」
「可愛いなー。」
「もう分かったってば!何でもやるって!」