(二)この世界ごと愛したい
顔を上げること出来ないし、背後にいるシオンの方を見ることも出来ない。
もう落ち着きたいから早くどっか行ってくれ。
「…何その顔。」
「〜っ!後で行くから先に行ってて!!」
私の正面に回り込んだシオンが、私の顔を見て溜め息を溢す。
「…あんた、やっぱ可愛いね。」
散々可愛くないと言っておきながら。
ムカつくだのイライラするだの言われた記憶だってこっちはあるのに。
サラッとそんなことを言われるもので、より温度が増す。
「っもう無理!!」
「…あーあ。ここがエゼルタなら誰の制止もなく好き放題出来たのに。」
「なっ、何する気だったの!?」
「こないだの続きを最後まで?」
私の熱は冷めることを知らないどころか、どんどん温度を上げていく。
何で私を起こすのこの人に頼んだの!トキの馬鹿!!!
…なんて怖くて本人には言えないので。
心の中で盛大に叫んで、その腹いせに目の前のシオンを睨んでみる。
「その顔、今が良いって事?」
「ちっ、違う!!!」
明日、シオンと二人でアレンデールに行くのかなり不安になってきました。
もう誰か代わってください。
「早く行こ…。」
「貴女を待ってたんですけど。」
「…鬼畜。」
聞こえないように暴言を吐きつつ。
熱は冷めていないままだけど、このまま二人でいると何されるか分からなかったので足早にトキがいてくれるだろう広間へ向かった。
「「「…え?」」」
広間のドアを開けた私を見て、隊士の方々が目を丸くした後。
私の熱が伝染したかのように顔を赤く染めていく。
「「「(何でそんな顔してんのリンちゃん!!!)」」」
隊士達は妄想を膨らませて悶え苦しみ、そのまま動けなくなる人もちらほら。
「…ちょっとシオン。起こして来てって言っただけなのに何したの。」
「起こしただけ。」
「もう目も当てられないくらいリンいっぱいいっぱいじゃん。」
「…さあ?」