(二)この世界ごと愛したい



私の言葉を聞いたトキが、どこか嬉しそうに笑ったのを見て。


隊士の皆さんも何かを察してくれた気がする。





「んで?」


「うん?」


「あのシオンがそこまでする程の事態。お前等はどう考えてんだあ?」




「「「すみませんでした。」」」




みんなと一緒に平謝り。


元はと言えばこの城の治安の悪さが原因ですけどね!?






「リンに現を抜かせんのは俺だけだ。それでも馬鹿なこと考える奴はまず俺に言え。」


「う、現って…。」




「その馬鹿な気持ちごと叩きのめしてやる。」





アキトさん。


せめて私を降ろしてから言ってください。



こんな恥ずかしい現状なのに逃げ場もなくて辛いです。





「はい。じゃあ今日はお開きにしよ。」


「トキ話がある。部屋行ってんぞ。」


「あーうん。分かった。」




私を持ったまま、次はトキの部屋に移動するアキト。





「ね、ねえ。降ろして…?」


「お前は碌なことしねえからダメだ。」


「そんなことない!隠れんぼは…ちょっと思うところがあって始めたんだけど。でもっ…。」


「…ったく。」




アキトはそっと私を降ろす。





「お前はもっと俺を慮れ。」


「…前はレンって言ってたよ?」


「今は俺。」


「そ、そっか。ごめん。」




チラッとアキトを見ると、何故かアキトも私を見ていて。


何とも言えない空気が流れる。



だって。私への想いをレンに伝えに行くと言っていたアキト。その事の行方を私から聞くのは…なんか、ね?





「…レン、元気に医術師してたぞ。」


「…そっか。」


「毎日寝る間も惜しんで頑張ってるらしいから、酷え顔だったけど。でも王宮にいる時より全然人間らしい顔だった。」


「それは、よかった…です。」




何とも微妙な顔で、微妙な返事しか出来ない私。


あっという間にトキの部屋に辿り着いた。





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