(二)この世界ごと愛したい
「ああ、ただいま。邪魔したかあ?」
「と、とんでもない。私も気を失っていただくのが、一番平和かな…と思ってました…。」
「…こっちはこっちで逆大奥にしやがって。」
「はい?」
逆大奥とは???
「…とりあえず。」
「えっ!?」
ふわりと私を抱き上げて。
そのまま移動を始めたアキトさん。
「ど、どこ行くの!?」
「この城は俺が取締役なんでなあ。」
と、取締役?
何を言っているんだと考えている間に再び広間に帰って来た。
そこではやけ酒に溺れる隊士たちが、帰ってきたアキトを見て目を丸くしている。
「随分楽しそうなことしてたらしいなあ?」
なんか色々…なんで筒抜けなの。
この場にいなかったはずのアキトが、どうして隠れんぼ事情を知っているんだと。
私も含めた全員が思っている。
「…トキ?」
「俺は楽しい方の味方だから何にも話してないよ。」
確かに、トキは広間にいた。
「…珍しくシオンが俺に頼むんで何事かと思えば。」
「し、シオンが…アキトに?」
「自分で斬り伏せてお前一人助けられるくせに、それはしねえって言うし。アイツ変なもん食ったのかあ?」
みんなも分かってくれるといいな。
私がシオンが優しいのをみんなに知ってほしいって言ったから、わざわざアキトにお願いしてくれる人だよ。
みんなと仲良くしてほしいって言ったから、自分の剣から手を離した人だよ。
「し、シオンさん…。」
「あの人以外と冷たくねえのか?」
分かってくれる人は、きっといる。
その偉大な力で、そんな人たちをこれからも守っていってほしいと思う。
私にしか向かない優しさも、いつかは色んな人に向けてほしいと思う。
「シオンはやっぱりお兄ちゃんだから。」
「あ?」
「不器用でも、お兄ちゃんって立場の人はやっぱり優しいよね。」