(二)この世界ごと愛したい




リンは俺にとって、レンの嫁。


昔からの付き合いがある、レンが惚れた女。






そんな女に、まんまと惚れた俺。




自分でも情けねえと思う。レンに申し訳ねえと思う。


だから気持ち一つ伝えられない。








「そんなアレンデールは今、大混乱だよ。」


「…は?」




アレンデールが混乱?


リンが帰国して鬼人が復活したのに?





「どうもリンに罪が課されることになったらしいんだよね。」


「そりゃあ和睦条約中に王族殺せば罪にもなるだろうなあ。お陰でうちも大忙しだ。」


「謀反は勿論のこと、それだけじゃないんだって。」


「ああ?」




トキは各国の情報を集めるため、至る所に間者を放っている。


その間者からの情報らしい。





「謀反に加えて自分の国の街を襲撃して、国外追放だってさ。」


「……。」


「アキトはどう思う?」


「…その辺の腹の探り合いはお前等の得意分野だろ。俺に聞くな。」





あーあ。


リンはまた泣いてねえといいが。






「さらにさらに、南東からアレンデールに一気に攻め入った軍を一人で相手にしたらしいよ。」


「…いよいよ人間業じゃねえなあ。」


「リンは今、どんな気持ちだろうね?」


「…さあな。」




大丈夫だ。


鬼人もルイも、側にいるんだろ?




じゃあリンはたぶん何も問題ねえ。


きっと笑って過ごしてる。






「…アキトは素直じゃないね。」


「俺は素直だ。」


「心配なら心配だって言えばいいのに。」


「お前は最初あんだけリンに関わるなって怒ってたくせに、今はすっかり懐いたなあ?」




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