(二)この世界ごと愛したい




神事の日。



落ち着かない気持ちに苛立ちながら、城に留まった。



話してくれた通り、見事に王とエリクを討ち取って、そのままアレンデールに帰って行った。




それからこのセザールは衰退の一路を辿る。




これでも五万の軍を率いる立場の俺は、一息を与えられることもなく戦場へと駆り出される。



それは別にいい。




戦っていれば、唯一。


お前を忘れていられる。





そうして戦って戦って戦い続けていたら、この国の第一将として名が上がり。



また更なる激戦区へと赴く。







「アキトっ!」


「あー?」


「ちょっともう限界。俺王宮の馬鹿共に折檻してくる。」




あまりに酷使されすぎている現状に、トキが怒る。



トキを怒らせると良いことねえのに。


王宮の馬鹿共はそんなことにも気付かない。やっぱ馬鹿はどこまで行っても馬鹿だ。





「あー程々になあ。」


「…アキトはまだ心の穴が塞がらないみたいだね?」


「はあ?」


「毎日毎日。懲りずにアレンデールの方角ばっかり見てるよね?」




…そんなに見てたか、俺は。




「偶然だ!俺はそんなに女々しくねえよ!」


「リンに会いたいって顔に書いてるよ?」


「書いてるわけねえだろ!?」




トキが不意に言った、その名前にさえ。


俺の心は反応する。



< 3 / 1,120 >

この作品をシェア

pagetop