(二)この世界ごと愛したい
神事の日。
落ち着かない気持ちに苛立ちながら、城に留まった。
話してくれた通り、見事に王とエリクを討ち取って、そのままアレンデールに帰って行った。
それからこのセザールは衰退の一路を辿る。
これでも五万の軍を率いる立場の俺は、一息を与えられることもなく戦場へと駆り出される。
それは別にいい。
戦っていれば、唯一。
お前を忘れていられる。
そうして戦って戦って戦い続けていたら、この国の第一将として名が上がり。
また更なる激戦区へと赴く。
「アキトっ!」
「あー?」
「ちょっともう限界。俺王宮の馬鹿共に折檻してくる。」
あまりに酷使されすぎている現状に、トキが怒る。
トキを怒らせると良いことねえのに。
王宮の馬鹿共はそんなことにも気付かない。やっぱ馬鹿はどこまで行っても馬鹿だ。
「あー程々になあ。」
「…アキトはまだ心の穴が塞がらないみたいだね?」
「はあ?」
「毎日毎日。懲りずにアレンデールの方角ばっかり見てるよね?」
…そんなに見てたか、俺は。
「偶然だ!俺はそんなに女々しくねえよ!」
「リンに会いたいって顔に書いてるよ?」
「書いてるわけねえだろ!?」
トキが不意に言った、その名前にさえ。
俺の心は反応する。