(二)この世界ごと愛したい
この場の全員が何してんだと呆れ返っているのも分かってる。
あまりの至近距離に、私も思わず顔が熱を持つ。
もう早くこの場から立ち去ってしまいたい一心で、私は逃げるように風穴を開けた天井から上空へ舞い上がる。
「うわー本当に炎だ。熱くないね?」
「待って待って!まだ安定できてない!!!」
「不思議だな。ねえ、これってどこまで飛べるの?」
「と、トキ!本当にちょっとだけ待って!?」
気流を安定させられず。
ぐらりぐらりと体勢が乱れる。
「ごめんごめん。」
「…と、とりあえず方向あってるかな?」
「あってるよ。」
どうにか気流は安定したものの、きちんと場所を把握していない私。
「そう言えば、リンに会えてアキト喜んでたでしょ?」
「いや会って早々喧嘩しちゃって。傷付けちゃったし怒らせたし…。仲直りはしたんだけど。」
「アキトと喧嘩できるのはリンだけだろうね。」
「…私だけ?」
トキが言わんとすることは何となく分かる。
アキトは人の心に敏感で、その心を汲み取ることにも長けているから。だからこそ、喧嘩になる前にアキトは対策が打てる人。
…でも私だけってことはないと思う。
「それより大丈夫?腕しんどくない?」
「失礼だなー。非力に見えるだろうけどリン一人くらいなら一晩中抱いてられるよ。」
「だっ…!?」
なんて過激な言い回しをするんだ!?
けどトキの力はやっぱり男の子で、特に危うさもなく私を安定して抱えたままでいてくれている。
「その髪飾り、俺があげたやつだね。」
「うん。せっかく会えるから諸々お礼も伝えたくて。」
「リンは優しい子だね。」
「普通だと思うけど…。」
トキにもらった髪飾りは今日も付けてます。
髪の毛下ろしている時以外は、基本付けたまま過ごしておりました。