(二)この世界ごと愛したい
時刻はお昼を回ったくらい。
そう言えばここに住んでいいってカイが言ってたけど、ここまで警戒させてしまうんじゃ止めた方がいいかもしれない。
「お嬢に嘘付くメリットないやろ。」
「デメリットもないけどねー。」
「…俺、何か白狼と話してる気分やわ。」
「え!?私そんなに性格悪そう!?」
それは不本意すぎる!
私あんなに性悪じゃないよ!!!
「それもそれで失礼やろ。」
「あの兄弟性悪だよ?トキは愛嬌あるからまだマシだけどシオンはもう鬼畜だよ?」
「弟軍師に愛嬌あるか?あの兄弟どっちも性格悪いで?」
「おーちゃんはトキの可愛さを知らないんだね。トキは実はお兄ちゃん思いで可愛いんだよ。」
おーちゃんは信じられないと言わんばかりにまた顔を顰める。
トキとおーちゃんは二人とも可愛いけども。
トキは綺麗な女の子にも見える美少年。おーちゃんは幼い女の子みたいな童顔。
「…大丈夫。おーちゃんもトキに負けないくらい可愛いよ。」
「何が大丈夫やねん!そんな心配してへんわ!!!」
いつの間にか出来上がったコーヒーを、目の前に置いてくれたカイ。
るうには負けるけど、これが意外と美味しかったんだよね。
「本格的な仕事の話は明日にしよか。」
「…別に雇ってくれなくてもいいよ?何かもう私ただの厄介者じゃない?」
「お嬢は金のなる木やって言うたやろ。あとこれ、今回の報酬な。」
「え!?」
ドンっと。
そんな音が鳴るほど重みのあるお金をコーヒーの横に置いたカイ。
「私相場知らないけど多過ぎない?」
「今の戦の情報提供料とミケを見つけてきてくれた報酬合わせとる。」
「…じゃあコレとこれから働く一ヶ月分の報酬全部、国に寄付しといてくれる?」
「は?」
「連合軍の借り返したいって言ったじゃん。軍事で助けがいらないならお金で解決しようと思って…。けどこの国財政も困ってないかー。」
他に良い案はないだろうか。
「やからここで働いてくれるだけでええって話になったやん。」
「それはカイの懐が潤うだけで国のためにならないでしょ。」
「オウスケに手貸せばええんやろ?」
「それは軍事に関わる時の話。イコール国のためになるからね。おーちゃんが戦に行くなら私が勝利の女神になってあげるけど行かなさそうじゃん。」
…勝利の女神は言い過ぎか。