(二)この世界ごと愛したい



「アレンデールの姫…あ、今は魔女か。セザールの祭りに現れたらしいんだよ!」


「へー。」


「見てみたかったなー!その日は天帝も噂のかぐや姫も同じ場所にいたって言うし!俺も行けばよかったぜ!」


「…へー。」



噂の人にもう会えてますけどねー。


そんな魔女っぽくもなければ、御伽話のようなお姫様でもなくてすみませんねー。




「一目見てみたかったなー!戦神もかぐや姫も!」


「…そんなの見ても楽しくないよー。」


「確かに、嬢ちゃんに敵う女はいねえだろうな!」



いや、全部同じ人間なんだ。


敵う敵わないの話じゃないんだ。




「それよりカイさん!姫繋がりの話で言えば、最近エゼルタの姫がまた大暴れしてるらしいぜ!」


「またかいな。あの姫さんも元気やなー。」



不意に話題になったユイ姫さん。


私の討ち倒すべき相手の一人なので、ここは真剣にちゃんと聞こう。




「何でも徴税に手を出し始めて、無茶な金額取り立てようとして国民が暴動起こすくらいらしい。」


「恐ろしい姫さんやな。」


「全くだ。ちょっと前にも自分の乗った馬車の前を横断した子供を処刑するって大騒ぎしてたもんなー。エゼルタの行末はどうなるんだか。」



うわー。


ユイ姫さんについて、シオンもトキもあんまり教えてくれなかったけど酷い話だ。



そんな暴君なお姫様じゃ、あの二人が手を焼くのも頷ける。




「あ、そうだ。アレンデールでも徴兵が始まったぜ!」


「ほうー。いよいよ鬼人の復活やな。」


「だな!おっかねえったらねえよ!」



カイはこうやって情報収集してるのか。


色んなお客さんを相手にして、ただ相槌を打つだけ。それだけで多くの情報が得られる。



ここで目ぼしい情報には、誰か雇って詳細を調べさせに行って肉付けして行く。




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