(二)この世界ごと愛したい




「この裏口から出なさい!早く!!」



まだ近くにいたのか、先程の女性達が私に道を教えてくれる。




「あ、りがと。」



反射でお礼を伝えると怪訝そうにされた。


言われた通り裏口へ向かうと、更に後ろから私の耳に声が届く。





「…何してるの?」



私がモタモタしたせいで、どうやらレンが帰ってきてしまったらしい。


レンが後ろにいるのはわかっているが、振り返る元気はない。




「れ、レン様っ!」


「この女は…他国の間者かもしれませんっ!」


「そうです!レン様に危険がないよう追い払っていたところです!」



女性達がそれぞれレンに苦しい言い訳を始める。




「追い払う?」


「とにかくレン様はお疲れでしょうし、ここは私達にお任せください!」



一人の女性が私の腕を引っ張りそのまま外へ出そうとした。


しかし、その力にさえついて行けない私の身体が大きく揺れる。





「…安静にって言ったのに。何したらこれだけ悪化するの?」


「れ…、ん。」



足の踏ん張りが効かず倒れそうになった私を、再びレンが支えてくれる。




「とにかく今は休まなきゃダメ。」


「ごめ…ん。」


「うん、大丈夫。すぐ治してあげる。」



流石はゴッドハンド。


すぐに治すと言い切ったレンはその場で私を抱えて歩き出す。



それをどうにか引き止めようと女性達も負けない。




「お待ちください!レン様!」


「まだ間者の疑いが晴れておりません!」



優しいレンは、彼女達の必死の叫びを蔑ろにはしない。


だから立ち止まって振り返る。






「仮に間者でも構わないよ。俺は騙されたって避けられたって、この子が好きだから。」




ああ。


もう意味が分からないくらい身体は熱いというのに。



更なる熱が加わる。




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