(二)この世界ごと愛したい
それは、セザールのディオンへの侵攻を止めるため。私がトキへ記した手紙の冒頭に書いた。
“ この先は均衡を崩す諸刃の道です。”
確かに紛れもなく、私が書いた。
「…なんだっけー。」
「ふーん?」
「怖い怖い怖い。その笑顔可愛いけど怖い。」
「吐く?」
…トキは誤魔化せないな。
あれは、どうしてもアキト軍に引き返してほしくて。だからどうにかトキの気を逸らしたくて。
仕方なく書いた私の本音。
「…そのまんまの意味。あのまま進んだら、ディオンめちゃくちゃになるじゃん。」
「そのつもりで進軍したんだよ。今更リンがそんなこと言うの変だよ。」
全くもって仰る通り。
だけど、今ここで。よりにもよってシオンの前では特に話したくない話題だ。
「変じゃないよ。均衡を考慮するのは私にとって不可欠だし。セザールは目的の領地は手に入れたでしょ。」
「目的が叶ったから、リンはあの場所を選んだのかなって。俺は読んだんだけど、どう?」
「……。」
「誰でもない俺を敵に回すこと、リンはしたくないよね?だから最低限俺の目的を達成させることで、怒られる不安を拭いたかったんだよね?」
あらまあ。
どうしましょう。
ぐうの音も出ません!!!
「この戦国の世で、敵国を落として生き残る世界で。リンはどうしてその道を諸刃だって言ったの?」
純粋なるトキの、素朴な疑問。
「…その答えはアレンデールの姫として、答えなきゃいけないことなんだよね。」
はたまた、戦神として。
単なる私一個人だけを考えた答えではないから。
「アキトやトキを、敵に回したくなかったの。」
「それは知ってる。」
「ただ、あの道を進まれると…そんな二人と正面きって剣を抜かなきゃいけなかったから…かな。」
「え?」