(二)この世界ごと愛したい
次に目が覚めると、すっかり夜も更けている。
おーちゃんもいない。
いないけど、自分がベッドで寝ているのでおーちゃんが運んでくれたことは分かった。
そして。
目が覚めたからには、寝ていた時間を取り戻そうと私は一人で剣を取る。
「…よし。」
そのまま再び街外れまで行き、一人で素振り。
重く感じる身体にも、その重力にも少しずつ慣れて来ている…はずだ。
これは動けば動く程意味のある稽古だ。
寝ているだけでは力は手に入らない。
「…っ。」
ふわっと吹く風が。
私を宥め、背中を押して、前を向かせてくれる。私に力をくれる。
両手に持った剣を、再度握り直す。
「頑張れ、ハル。」
…私も、頑張るから。
負けないから。強くなるから。
生きて帰って来てくれれば、もうそれでいいから。
今はただ、舞を舞うように。
ハルのために、ハルに届くようにただ剣舞の如く舞おう。
この優しい風に乗って、この祈りが届くといいな。