大掃除してたら卒業アルバム見つけてつい見ちゃうよねっていう話
「深雪ー、そっちの片付け終わった?」
寝室のドアを開けると、妻が片付けもしないで床に座り込んでいた。

開けられたクローゼット。
大掃除をする前より散らかった室内。
一体何があったんだ?


「深雪?何してるの?」
近付くと、妻は卒業アルバムを見ていた。

「クロ―ゼットの中にあった段ボールあったらさ、卒業アルバムが出てきてさ。
懐かしくて…あ、見てみてミッチー」
「ミッチーって」

「懐かしいなあ。
あ、これ体育祭のクラス対抗リレーの時だ。
ほら、ミッチー」
「だから、ミッチーってなんでだよ」

「クラス対抗リレーで私転んじゃってさ」
「うん」
俺の質問に答えることもなく、思い出話をし始めた。

「それまで2位で先頭といい勝負してたの。
それなのに転んだせいで最下位になっちゃって。
膝から血は出てるしさ。
もう泣きそうになりながら、バトンを渡したの」
「うん」

「そしたら、バトンを貰った雅道君が、ごぼう抜きって言うの?ものすっごい速さで走ってさ。
結局鼻差で一番でゴールしたのよ」
「鼻差って…競馬じゃないんだから」

「いやいや、ホントに僅差だったの。
ほら、その時のゴール写真、卒アルでも使われてるからね」
「うん確かに」

「で、そのリレーの時から、雅道君が学校中の女子からアイドルとして認知されたのよ」
「アイドル…」

「そう!アイドル!
もともとバスケ部の主将でかっこよかったから人気もあったんだけど、その日から女子たちは『マサミッチー』と呼ぶようになってね。
もうね、ホントにめちゃくちゃかっこよかったの!」
「へえ」
そうなんだ…。

「で、そのうちマサミッチーがミッチ―に変化していったの」
「深雪も、ミッチーが好きだったの?」

「そりゃもちろん!大好き!今も大好き!」
「まじかーーーーー!」


俺は思わず深雪を抱きしめて、ベッドに押し倒した。


「きゃあ」
と叫ぶ深雪を抱きしめ、キスをする。


「ちょっ」
ちゅ。
「待って」
ちゅ。
「片付けが」
ちゅ。
「まだ」
ちゅ。
「終ってないか…らぁん…ん…」
ちゅ。
「待てない」
ちゅ。

妻のこんな話聞いたら、襲わないわけにはいかない。
深雪の手が首に回る。


「俺も、高校の時から深雪のこと好きだったよ」
「うふふっ。相思相愛ですね」

「うん、相思相愛。高校時代より今はもっと好きだよ」
「嬉しい!私も大好き、雅道くん!」


可愛く『大好き』なんて言われちゃったら、もういちゃいちゃタイムしかないでしょう。




  ***


そして。
ゴーーーーーーン。


片付けが終わってないまま、除夜の鐘をきいたのだった。




おしまい
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