苦くも柔い恋
千晃は謝るだけで、何も許してはくれない。
逃げることも、忘れることもさせてくれない。
目を逸らすことすら、させてはもらえない。
「俺なんかが好きになって、ごめん」
そんな言い方をしながらも、千晃の顔がゆっくりと近づいてくるのを感じた。
——ずるいよ、そんな言い方…
俺なんかなんて、死んでも思わないくせに。
人に謝るなんてこと、絶対にしたくないくせに。
そんな反発心を抱きながらも、体は千晃を押し返そうとはしなかった。
そうしてゆっくりと近づき重ねられた唇はかつてのように触れるだけで離され、そのまま強く抱きすくめられた。
「…もうどこにも行くな、和奏」
微かに震えた声は、千晃の不安を表しているようだった。
その姿があまりに健気で、捨てられた子犬のようでキュウと胸が締め付けられてしまい、つい背に手を回して撫でてしまった。
嫌がるかなと思ったけれど予想外に千晃はされるがままになっていて、また彼の知らなかった面を目の当たりにした。
それでも幻滅した、なんて思わないのだから自分も大概である。
この気持ちが未練なのか今の千晃に対する恋慕なのかは定かではないけれど、確実に気持ちが変化していっている事を、もういい加減受け入れるしかなかった。