苦くも柔い恋



——だめだ、泣く。


不安が全て消え去ったわけでもないのに、なぜか千晃の言葉が胸に染み渡る。

好きだと何度も言われるたびに、心に突き刺さった針がひとつずつ優しく抜かれるようで、怖いのに嬉しくて。


色んな感情が処理できなくなって、堪えていた涙が落ちてしまった。

それを黙って拭う千晃の手の温かさに、ますます涙は止まらなくなってしまった。



「…触られるの、嫌か」


涙の意味をどう受け取ったのか、そう尋ねてきた千晃に首を横に振った。


「千晃が、何回も好きなんて言うから、」

「……」

「昔みたいになるの嫌なのに…怖いのに、なのに…」


なのに、なんだろう。
自分に問いかけてみるけれど、その先は考えたらいけない気がした。

このまま見てみぬふりをしていたかった。
そうすれば、傷付くことはないから。

けれど涙を拭っていた千晃の手が頬に当てられた時、ダメだと思うのに期待をしてしまう自分がいた。


「千晃のばか…っ、なんで今更、」

「…ごめん」

「なんで忘れさせてくれないの…っ」

「ごめんな、和奏」



< 126 / 267 >

この作品をシェア

pagetop