苦くも柔い恋
きっと今日を逃せば2人で話せる機会はもう無い。
それならば、もういっそここで終わりにしてしまおうと思った。
黙って振り返る千晃の目を見た瞬間、心臓が大きく跳ねた。
千晃には美琴がいる、そんなのはとっくに承知の上だった。
自分に対して何も感情が無いどころか、好かれていないことも分かってる。
本当は、告白出来る子達が羨ましかった。
きっと彼女達は自分と同じだから。
叶わぬ恋と分かっていて、それでも伝えたのは彼を諦めたかったから。
今日会うまでは諦める勇気を持てなかった。
けれどこうして2人で会って、美琴のことばかり気にする千晃を目の当たりにして心が決まった。
伝えるつもりのなかった想いだけど、こうして姉ばかり見ている姿をこのまま見続けるのは辛すぎる。
もういっそ盛大に振られて、断ち切ってしまいたかった。