苦くも柔い恋
「いつも来てもらうばかりで悪いから、今度は私がそっちに行ってもいい?」
千晃だって多忙の身だ。
毎週来るのは相当負担だろう。
頻度を減らせば良いのかもしれないが、和奏とてまだできたてほやほやな恋人関係を楽しんでみたいのだ。
「勿論だ。けど車走らせんのは俺の趣味でもあるから、あんまり気負うなよ」
「分かった。邪魔しない範囲内で行くね」
「和奏を邪魔になんか思うかよ」
そう言って体を離し、千晃は軽くキスを落とす。
じゃあまた、となんとも寂しい言葉を残して千晃は帰っていった。
寂しいだなんて思う日が来るなんて思わなかったなあ。と、自嘲気味に笑い、和奏は部屋の奥へと戻っていった。