苦くも柔い恋
長期休み明け、どうしても休み中にだらけてしまうのは何も大人だけでない。
いくら受験生といえどまだ子供なのだ、ついつい休暇を楽しんでしまうのは仕方がない。
けれど人生の中でも数少ない人生を左右すると言っていい大事な時期、講師として心を鬼にしてでも日常に引き戻さねばなるまい。
という事で、初日の授業は実力テストから始まる。
そしてその採点の為、和奏は初日早々残業で残っていた。
丸とチェックをつけるひたすらに同じ作業に目の痛みを感じて顔を上げ肩を揉んでいると、少し遅めの個別授業を終えた香坂が職員室へ戻ってきた。
「お疲れ〜」
すれ違う講師達にそう声をかけながら、自席へ戻る途中に座る和奏にも分け隔てなく声がかかる。
「橋本もお疲れ」
「お疲れ様です」
愛想笑いを浮かべて返せば、香坂は何かを思い出したようににんまりと笑った。