苦くも柔い恋
「違うわ、阿呆」
「アホって…」
「お前が居なかったからに決まってるだろ」
ぴたりと箸が止まる。
「私…?」
「和奏が居ないだけで何もかもつまらなかったし、空気が薄くなったみたいで息苦しかった」
「……」
「お前が居ねえとマジで駄目なんだよ、俺は」
千晃に揶揄う様子は一切無い。
とても落ち着いているように見えるけれど、今の千晃を見ていると当時の様子は少しは想像がつく。
きっと言葉通りの学生時代を過ごしたのだろう。
「…そっか。じゃあ、これからはそうならないよう気をつけるね」
「次なんて絶対起こさせるかよ」
その強い言葉に、ファジーネーブルで口元を隠しながら笑った。
そうしていると料理が次々と届き、閑散としていたテーブルの上が急に狭々しくなった。