苦くも柔い恋
けれどその年の秋頃に開催された文化祭で美琴がミスコンで優勝した時、燻っていたモヤモヤが不安へと一変した。
美琴が全校生徒に周知されると同時に、その幼馴染である千晃も比例して名前が知れ渡った。
校内随一のベストカップルなんて呼ばれて冷やかされているにも関わらず、千晃はそれに対して否定をしようとはしなかった。
不安でたまらなかったけど、美琴の方からやんわりと否定をしていたし、真面目な千晃がいい加減な事をするはずがないと、その時はまだ信じていた。
勇気を出してクリスマスも誘ってみた。
けれど部活のひとことを返され、バレンタインを渡してみればホワイトデーのお返しは一応もらえたけれどケーキ屋のスノーボールを素っ気なく渡してきただけだった。
恋人らしい事は何も無いまま2年生になってもそれは一向に変わらず、時折登下校が一緒になった時に少し会話をするくらいだった。
それだって高確率で美琴が一緒で、軽口を叩き合う2人をただ後ろから見ているだけだった。
こんなの付き合ってる意味はあるのかなと不安と焦燥が限界を迎えつつあった頃、トラウマともと言える高校生活二度目の文化祭が開催された。