苦くも柔い恋
「美琴、あなた何言って…」
和奏から手を離した美琴は母を冷たく見下ろし、そのまま力無く椅子に腰を落として俯いた。
「…私は悪くない」
そう呟いた美琴の声は、酷く揺れていた。
「お母さん達が悪いんだよ、それに千晃も…!誰も私を見てくれなかった。本当の私なんか、価値がないの!誰も求めてくれないの!なのに和奏は…っ、和奏ばっかり!…全員、大嫌い!」
机に突っ伏し、大声をあげて泣く美琴を誰も責めようとしなかった。否、できなかった。
わんわんと子供のように泣き喚く美琴の肩を母が抱き、そのまま2人でリビングから消えていった。
その背中を見送り、父はバツが悪そうにこちらに顔を向けた。