苦くも柔い恋


「…悪かったね、2人とも。何より千晃くん、疑ってすまなかった」

「いえ。…あの、美琴は」

「美琴の気持ちに気付いてやれなかったのは親である私達の責任だ。千晃くんも…それに和奏も、何も気に病まなくていい」

「お父さん…」

「けどな、和奏」


少し表情を厳しくした父が強い口調で言った。


「交際を黙っていたのは流石に酷いぞ。お母さんがどれほど悩んでいたと思う」

「…ごめんなさい」


肩を落として謝れば、千晃も同じように頭を下げた。
その様子を見て、父は肩をすくめた。


「また改めて話は聞くから、ひとまず今日は帰りなさい。泊めてやりたいが、美琴があんな調子だからね」

「分かってる。…また、連絡するね」

「ああ」


父に挨拶をし、千晃と2人で廊下に出て玄関へ向かう。

振り返ってみたけれどそこには母の姿も美琴の姿も無く、ただ静かな空気があるだけだった。


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