苦くも柔い恋


「ごめんね、和奏。美琴ったらどうあっても和奏には謝らないって聞かなくて…」


母はこちらに目配せをして悲しげに言った。


「いいよ、お母さん」

「せめて子どもの事で嘘ついた事だけでも謝るようには言ったんだけど…」

「本当にいいから」


元より謝ってもらうつもりなんて無かったし、顔を合わせたところでなんて言っていいか分からないから構わない。


「今は美琴を支えてあげて。急に妊娠と結婚だなんてそれこそ不安だろうし」

「そうね…」


そこで会話は途切れ、父が席を立ってもういいだろうと切り出したところで解散となった。

玄関まで見送りの際、母は最後に千晃に念押ししていたけれど千晃は誠意を持って応えていた。

そのあとは思いの外早く家を出ることになったので、少しだけ近所を散策して帰ることにした。


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