苦くも柔い恋
憧れがいつ恋慕へ変わったかはわからないけれど、少なくとも高校1年になった時には確実に千晃へ恋心を抱いていた。
けれどそんな事誰にも言えなかったし、言えるはずもなかった。
いつだって千晃の隣には美琴が立っていたから。
だからこの想いが風化するまで誰にも告げずに心の中で仕舞っておこうと、そう思っていた。
けれどいつまで経っても思いは冷めるどころか内側に燻り、次第に嫉妬に塗れたドロドロとした感情へと変わってしまい、とっくに綺麗なものではなくなってしまっていた。
千晃と美琴がお似合いの2人だと噂されるたびに傷つき疎外感は増す一方で、どう足掻いたって手の届かない存在になっていく2人を見るのは辛かった。
幼馴染として3人で育ってきたはずなのに、2人だけの世界が構築されていく様を間近で見ているのは苦しかった。
…何より、大好きな千晃本人から裏切りを受け、もう心はボロボロに崩れてしまった。
心が限界を迎えた日、私は決断した。
2人から離れる事を。
大学入学を機に私はそれまでの全ての縁を断ち切り、新しい土地でたった1人で生きていく事を決めた。