苦くも柔い恋


せっかくだからとバスケ部のマネージャーをしていた美琴に誘われ、和奏もその試合を見に行った。

結果は決勝まで進んだものの全国レベルの常連校の強さには及ばず残念ながら敗退、そのまま彼らは引退となってしまった。


試合後も千晃含める選手達に声をかける美琴の後ろで「お疲れ様」と言えただけで会話らしい会話も出来なかった。


——千晃、大丈夫かな…


いつも通りに見えるけれど少し様子の違う千晃を心配に思ったが、すぐに囲まれてしまい遠くから眺めるしか出来なくなった。

そうなってしまえば居続ける意味もなくなり、邪魔にならないよう和奏はそっとその場を離れて帰宅した。


家に帰っても千晃の顔が頭から離れずどこかスッキリしなくて、テキストを開いてもあまり集中ができなかったのでその日は潔く諦める事にした。



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