苦くも柔い恋



「…っ」


考えるのも苦しくなり、スマホを投げ出して布団に潜り込んだ。

どうして違うと言ってくれないんだろう。

じわりと涙が浮かんでいると、一階から母の怒鳴り声が聞こえてきた。


「美琴!またこんなに遅くまで!勉強も大事だけど連絡を入れなさい!!」


母の台詞に更に嫌な予感を覚える。

美琴が今帰ってきたという事は、つい今しがたまで千晃と一緒に居たということだろうか。


そう思い至りすぐに部屋のドアを開けて外を見れば、同じ学校の制服を着た男子生徒の背中が見えた。

顔は見えないけれど、確かにシルエットが千晃に似ている気がした。


「……」


瞬間、ズルズルと力が抜けてその場に座り込む。

ポタポタと涙が落ち、もう一体何を信じたら良いのか分からなくなってしまった。


結局その後も美琴の遅い帰宅は続き、その度に和奏の心は抉られるように痛んだ。



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