苦くも柔い恋
信じられない気持ちでいっぱいだった。
担任からも再三無理をするな、志望校を下げろと言われていたにも関わらず、間違いなく合格していたのだ。
気分が高まった和奏はパソコンを前に口に手を当てて涙を流して喜んだ。
長い努力と辛い日々が一気に報われた気がした。
すぐに美琴の部屋に向かったが、ノックしても返事が無くドアを開けば無人だった。
「…まさか、」
もしやと思い、和奏は階段を駆け下り母の声も無視して家を飛び出した。
気のせいかもしれない、そうであって欲しい。
見知った道を駆け抜け、何度も目にした家の前に到着した。
表札に書かれた日比谷の文字を通り過ぎ、チャイムを鳴らそうとした手を止めた。
理性がやめろと訴えてくる。
にもかかわらず、和奏はドアノブを引いた。
呆気なく開いたドアに確信に近いものを感じ、下を見下ろせばそれは確定に変わった。