苦くも柔い恋
「放っておいたら辞めてくれますかね?」
「さあねえ…あんまりにも希望が無いって思えばやめるんじゃねえの。徹底的に無視するなり、幼馴染なら向こうの親に言いつけるとかさ」
「……」
咄嗟にやってしまったと思ってしまい、それが顔に出ていたのだろう、香坂が目を開いた。
「え、何?…もう手遅れな感じ?」
「な、何もありませんよ?何もしてません!」
おそらく香坂の手遅れとは体の関係を言うのだろうと察し、顔を熱くしながら否定した。
ただ家に上げたのが不味かったと思っただけだ。
しかも泊めているだなんて言えば、やっていることと言っていることがあまりに矛盾しているじゃないかと言われそうで口にはできなかった。
和奏の否定をどう取ったかは不明だが、なんだかどこか香坂がこちらに憐れむような視線を向けて来た。
「深くは聞かねえけど…あんまり思わせぶりな事はしてやるなよ」
「してません!」
「女には分からねえだろうから言っとくけど、好きな子前にして我慢するなんて、生半可な気持ちじゃできねえからな」
「……」
違う。そんなのじゃない。
好きとか、そんな事を思っているはずがない。
どうせ、一応は引け目を感じているとか、捨てられた憤りだとか、そんなものだ。
無駄に見当違いな期待をして、それを裏切られるなんてもう嫌なのだ。
そう自分に言い聞かせ、和奏は残りのカルーアミルクをグッと飲み干した。