苦くも柔い恋
そう言って1杯目のジョッキを早々に飲み干した香坂は2杯目を頼んでいた。
つられて和奏もカルーアミルクを口に含んではみたが、甘いだけでちっとも酔える気がしなかった。
香坂の言葉を信じるなら、千晃は和奏が消えて初めて自分の気持ちに気付いたというのだろうか。
だからって今更言われても困るしかない。
こっちは早く断ち切ってしまいたいのに、千晃の事なんて忘れてしまいたいのに。
欲しくて堪らなかった時には何もくれなかったくせに、都合が良すぎて腹が立つ。
腹が立つのに、憎めない。
「好きにさせておいたらいいんじゃないか?それとも、橋本はサッサと別れて次の男にいきたい?」
「いえ、当分恋人は要りません」
「なら尚更。向き合うのが癪なら見て見ぬフリでもしておけ。彼氏もそれを承知の上で橋本に寄って来てんだろ」
「……まあ、そうですけど」
千晃から何かを求められる事は無い。
ただ会って、話すだけ。
それだけだ。